ノリック日本GP優勝記念! がんばれヤマハ発動機!!

二輪車用前輪駆動システム

進駐軍車両 4つタイヤがあれば4駆、6つなら6駆・・・。自動車では一般的になってきた全輪駆動システム。 エンジンの生み出すパワーをすべてのタイヤに配分することで、効率よく駆動力を得ることができる高効率のシステムです。 元々は米軍のジープに代表されるように軍事車両で大いに飛躍を遂げた技術がルーツ。 その当時のおすすめポイントは、すべてのタイヤに駆動力がかかるため悪路走破性が高かったというポイント。 砂漠やぬかるみの戦場をものともせず、四方八方・縦横無尽・八面六臂の大活躍。 デメリットとしては重量が増す=燃費の悪化と、部品点数が増える=故障が増える可能性の増大。 ただ物量作戦の米軍にとっては、少々燃費が悪かろうが故障しようが、そんなモン屁のカッパ。 哀れ日本は無条件降伏の憂き目に・・・。 戦後の平和日本では、進駐軍のGIや営林署・電力会社のおっちゃんに長らく愛用されておりました。
スバル1000 乗用車に普及しはじめたのは高度成長期のこと。 零戦のエンジンや巨大爆撃機「富岳」を手がけた中島の技術者が寄り集まって作った「スバル」がパイオニア。 スバルに続いて各メーカーからも、寒冷地や山岳地向けに乗用4駆が細々と発売されはじめました。
モータースポーツ界に4駆旋風を巻き起こしたのは、同じく敗戦国ドイツ代表の「アウディクアトロ」。 フルタイム4輪駆動とターボパワーでWRCを席巻し、「4駆じゃなきゃ勝てない」と他メーカー技術者はふるえあがるしまつ。 その「4駆+ターボ」ムーブメントの尻馬に乗っかったのが、前述「中島」のライバル「三菱」。 このメーカーはとにかくフルラインナップが大好きで、「全車種4駆」とか「全車種ターボ搭載」とか、とかく商品構成を一色に染めたがる。 現在も「全車種GDI」を狙っているようないないような・・・。 「緑一色」なら役マンだけど、当時の三菱自動車は「ホンイーツー」ねらい。現に普通の2駆も売っておりました。 安めねらいが裏目に出たのか、生まれた時代が悪いのか、過去の軍需産業・財閥企業もバブル崩壊後は青色吐息。 ランサーがタイトルをもぎ取ってきても、GDI技術を切り売りしても、トヨタやホンダにゃ追いつけない。


モータースポーツの世界では4駆の登場でドライビングテクニックが一挙に様変わり。 駆動力を配分された前輪が車体を前に引っ張るので、前輪は常に進行方向の内側に切り足されてゆくようになってきました。 コーナーでお尻を滑らせながら逆方向にハンドルを切る「カウンター」は過去の遺物とまではいわないものの、 あくまでもスピン防止の意味合いを持つ補助テクニックに成り下がり、 ドライバーは進みたい方向に「ファイト一発」ハンドルを切るだけの初心者テクで戦えるように。
スバル555 また、アクセル操作も様変わり。 タイム短縮には「アクセルを踏み込む時間を増やし、ブレーキを踏む時間を減らす」のがモータースポーツの鉄則。 2駆でカウンターのまっ最中、アクセルの踏み加減は職人技の世界でした。 踏みすぎるとタイヤのスライドが増えスピン、ゆるめれば失速。 つまり中途半端な「パーシャルスロットル」を余儀なくされ、 全身のセンサーを働かせ微妙に変化するスライド量を感知して踏み加減を変えていました。 「パーシャルは冷蔵庫だけで充分」と、4駆ドライバーはコーナーでもガンガンアクセルを踏み、 その結果リザルト上位は4駆が独占してしまいました。テクノロジーの進歩の前には職人技もたじたじ・・・。いやな渡世だねぇ・・・。
結果はともあれ、主にラリーの世界では4駆は飛躍的な発展を遂げました。
その原因として上げられることは、
1.駆動力を分散することでタイヤの負担が減った。
タイヤの接地面積を考えればこれは大変画期的なこと。 タイヤ1本あたり路面との接地面積はハガキ一枚程度ですから、200馬力の車なら2駆でハガキ1枚に100馬力。 4駆ならその半分の50馬力の負担で済みます。
2.方向安定性の向上。
自転車に乗らずおすして歩くとき、Aサドルだけを持つ Bハンドルだけを持つ C両方持つ  ABCのうち一番安定した方法はどれでしょうか? 答えはCですね。それと同じこと。
その他にもいろいろなファクターがありますが、このふたつのポイントが4輪駆動システム普及の推進力になったと言えます。
サーキットと違い公道を使うラリーでは、めまぐるしく路面状態が変わります。 その中でタイム短縮のためにアクセルを踏み込むドライバーにとって、4輪駆動の安定性は何物にも代え難い安心感をもたらしたことでしょう。

市販車最速 自動車以上に路面状況にシビアな乗り物がオートバイです。スリップ=転倒を意味し、おまけにライダーはむき出し生身ですから、転倒=ケガを意味しています。 市販車ですら、そろそろ200馬力に手が届こうかというこのご時世、ちょいとアクセルを多めにひねれば後輪は空転し、 もくもくと白煙が舞い上がる今日この頃。 最高速は300km/hを越え、静止時点から400m先までのスタートダッシュは軽く10秒を切ります。 このモンスターマシンを、はんこひとつき頭金無し長期ローンで買えるんだからいい世の中になったモンですねぇ。 「ポルシェでもフェラーリでも、ケーニッヒでも束になってかかってこい!」と、血気盛んなあんちゃんは考えるわけ。 「高速道路の星(王様)」をBGMにして。
往年のヤマハワークスライダーにして「キング」と呼ばれたケニーロバーツ(親父の方)が、 ホンダワークス新進気鋭のフレディスペンサーや、スズキワークスのバリーシーンやフランコウンチーニと丁々発止の戦いを繰り広げていた頃。 日本GPで「デブの星」ホンダの阿部さんや「東海の暴れん坊将軍」スズキの水谷勝、 「汚れた英雄」ヤマハ平忠彦あたりが駆けめぐっていた頃のワークス500マシンでさえ、150馬力ちょぼちょぼの出力でっせ!  ピーキーな2ストロークとマイルドな4ストロークの、出力特製に大きな違いはあるにしても、無茶したらあかんがな!!
ロバーツvsスペンサー この当時の2輪車世界グランプリは別名「コンチネンタルサーカス」とも呼ばれておりました。 あんさんサーカスでっせ! ヨーロッパ各地を転戦する「巡業」的な側面はあるにしても、 観客は「軽業師の命がけ」を見物に行っておったわけです。あれから20年。市販車はその域に達したわけ。 一般ライダーの技能向上を置き去りにして・・・。
この当時ライダーの間でよく話題になっていたのが「ハイサイド」です。
ハイサイドとは、
1.コーナリング中にアクセルを開くことで後輪がスリップ。
2.あわてたライダーがアクセルを戻し、タイヤの空転が収まり急激にグリップ力を回復、
3.メトロノームや振り子のように、グリップの戻ったタイヤを起点にバイクが急激に立ち上がり
4.遠心力でライダーが吹っ飛ばされてゆく現象です。
おまけに吹っ飛ばされたライダーのあとを追って、バイクも転がってくることが多いだけにスリル満点・ダメージ倍増の事故のこと。 アクセルを戻さなきゃ、ただのスリップダウンですむんですけどねぇ・・・。

タイヤの円周 1分1秒のタイムを争うレースじゃないんだから、無理してアクセルをあけなきゃいいようなモンですが、 オートバイはアクセルをあけなければ曲がりません。自動車のようにハンドルを切れば曲がるってな訳にはまいりません。 自転車でいいですから今度試してみて下さい。ケガをしても私は何の保証もしませんが・・・。 直進状態から曲がりたい方向にハンドルを切ると、間違いなく反対側に転けます。 だからみんな曲がる方向に体を傾けるでしょ? バランスとるために。
極論を言えば前輪はいらないのです。オートバイは後輪だけあれば曲がるようにできています。 子供が遊んでいる一輪車でも、きちんと曲がっているでしょ?  オートバイだって前輪を持ち上げたまま、くるくるコマネズミみたいに回転できるんですよ。ただし、腕さえあれば・・・。 その秘密はタイヤの構造にあるのです。
横から見れば自動車用もオートバイ用も自転車用タイヤでもみんなまん丸。 ただ前後から見ると自動車用は四角く見えるのに、二輪車用は真ん中が高い楕円形です。 円周の計算方法を覚えていますか? πr(パイアール)、つまり直径×3.14・・・でしたね。 二輪車用のタイヤではセンターとサイドでは円周が違うのです。 つまり同じ回転数・角速度なら、センターの方が速くサイドは遅いわけです。 車体を倒すことで周速の違う部分が同時に接地すれば、当然ねじれが生じます。 複雑に力の方向が組合わさってできたベクトル。それが旋回力を生み出します。 体重を後輪にかけアクセルを開いて駆動力を加えることでベクトルは増大し、ぐいぐいと回り込むようオートバイは設計されていたのです。
このとき前輪は何をしているかと言えば、ただ後輪の生み出す旋回力のサポートのみ。いわば補助輪の役目です。 それでも、高速になればなるほど遠心力は増大するので、後輪ほどの仕事はしていないまでもちゃんと旋回力を発揮してはいます。 現にコーナリング中に前輪がスリップすると為すすべもなく転倒することは、ライダーなら経験上だれでもご承知でしょう。

おっとっと このような特性を持つオートバイの前輪に駆動力を配分することで、いったいどんなメリットが生まれるのでしょうか?  最初に上げられのは、発進時のフロントリフト(ウイリー)の減少です。 一般的なチェーン駆動の場合荷重のかけ方にもよりますが、発進時には車体の重心をナナメ後方から押し上げるような形になります。
静止した状態の車体重心は、ほぼエンジンの位置にあります。 それに対し地面とタイヤの接地面は駆動力によって前方に移動をはじめ、力のベクトルは重心の下に潜り込み突き上げる方向になるのです。 前に進もうとする後輪を支えるショックアブソーバが収縮することで、その傾向はより顕著になり、 この合力によって前輪のリフトが始まります。
このとき前輪にも駆動力が配分されていると、車体重心を前下方に引っ張る力が生まれます。 双方のベクトルが合わさることで、タイヤを強く地面に押しつけながら、前方にはじき出されてゆきます。 なぜなら、タイヤを地面に押しつける力は摩擦力を一層高め、エンジンパワーをくまなく地面に伝える手助けをしてくれるからです。
次に方向安定性が向上します。 ライダーが思い描くコーナリングライン通りに走るのが“ニュートラル”、大回りが“アンダー”、小回りが”オーバー”ステアです。 後輪にのみ駆動力を配分する現在の構造では、コーナリング中にアクセルをあけずにまわるとアンダーに、 あけすぎると後輪がパワースライドを起こしオーバーになり、微妙なコントロールがライダーには要求されがちです。 前後輪に駆動力が配分されることで、タイヤの負担は大いに軽減されます。 つまりはパワースライドの減少。 おまけにタイヤを地面に押しつけるトランクションも向上するので、大きくアクセルを開いてもグリップを失いません。 駆動力を与えられた前輪は本来の操舵輪としての役目を果たし、ニュートラルな旋回軌道を描きながら車体を引っ張り、効率よくエンジンパワーを推進力に変換することができるのです。

基本構造 前置きはこのくらいにして、では具体的な発明とはいかなるものかをご説明いたしましょう。 エンジンからの動力はクラッチからミッションに伝えられここで大幅に減速され、 前のスプロケットからチェーンに、チェーンから後輪に組み付けられたスプロケットへと伝達され、後輪を回転させています。 ちなみにスプロケットをベベルギヤに、チェーンをシャフトに換えたものがシャフトドライブ。BMWのオートバイでおなじみの技術。 主流を占める軽量なチェーンドライブは、細かい金属パーツを組み合わせたもの。 適度な伸びがあるため変速ショックを緩和してくれるメリットがありまが、チェーンの伸びやスプロケットの消耗など問題点も数多いもの。 シャフトは金属の棒で伝達するだけに頑丈ですが、重い上にショックが大きい。どちらも一長一短があります。 でも主流は何といってもチェーンドライブ。軽さが何より評価されているわけです。
このチェーンドライブの前側スプロケットにベベルギアを装着。 90度向きを変えられた動力をシャフトの替わりにワイヤーやケブラー繊維で編み込まれたロープで前輪のホイール付近まで伝達し、 再度ベベルギアを通じて前輪に直付けされたギアに動力を伝えるのがこの発明。 ロープはステンレスメッシュチューブにオイル付けで突っ込んでおけばモアベター。 前後輪の外周長を考慮に入れて、前後スプロケットやチェーンで生み出される最終減速比は、 これもまた前後のベベルギアで調整・シンクロさせておくことはいうまでもありません。基本はたったこれだけ。



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