P助の露天商日記vol.2

死 闘 編 11〜12月

11月 3日 日高町但馬ドーム・カニ祭り
かに ウインタースポーツシーズンともなれば、スキー・スノボを載せてた車で大渋滞。但馬ドームは兵庫県北部“関西のアルプス”神辺高原のど真ん中にある、全天候・開閉式の多目的グラウンド。
このグラウンドで開催される“カニ祭り”は、「町民の皆さんをねぎらってシーズンに向けてのパワーを蓄えてもらおう」と、地元日高町商工会が主催する町をあげてのイベントです。
目玉はなんといっても無料の“カニ汁”。さすがひと山越せばカニの本場“日本海”。
いよっ太っ腹!
カニ汁目当てに申し込んだモノの、地図を見てびっくり。すっ飛ばしても3時間はかかりそう。7時集合ということで、4時前には家を出る羽目にあいなった。
夜明け前の9号線は大型トラック・トレーラーの専用道路。峠の上り坂では黒煙を浴びながら、原動機付き自転車の法定速度以下で走ることを余儀なくされる。そこで、裏道・近道・回り道。非合法スピードで鉄クズ1号は漆黒の峠を走り抜ける。
そんな山中の電柱に立て看板を発見。“カニ祭り”の4日後に、同じ但馬ドームで開かれる「史上最大のフリーマーケット」のもの。どうやら丹後半島一円に立てられている様子。日高町に但馬ドームに近づけば近づくほど、看板の本数が増えて行く。そうこうする間に夜は明けて、但馬ドームに無事到着。
駐車場にたむろする連中の顔ぶれは兵庫県や岡山県勢が中心。また靴下屋はバッティング大会だ。グラウンド内に車を乗り入れにもつを降ろす。場所は先着順ゆえ、なるべく飲食ブースに近いところを確保した。
「搬入が終わった車は臨時駐車場に移動せよ」とのお達し。
早朝の澄みきった空気を胸一杯吸い込みながら、ちょっとしたハイキング気分も味わえる。
なにせ駐車場から10分は歩くから。
ドーム内にカニやうどん、ラーメンに一夜干しなどの香りが渾然一体となって漂うなか、出店準備は完了。
これがまた売れないのだ。
去年も出店した連中に話を聞くと「客数は去年の半分以下」とのこと。お隣の皿そばで有名な出石町で“お城祭り”も開催中だとか。おまけに「今度のフリマにも来るんでしょ?」と、のたまって買い控え。
もう気分は飲食モード。地元特産の”マロニエ鍋”と“カニ汁”・“トチ餅”の暴れ食い。ただし・・・カニ汁に大きな身を入れるのはあくまでも有料オプション。無料サービスではカニ足のつま先のぶつ切りの小片が少々。まあゆで汁でだしは良く出ていますが・・・。
小雨のしょぼつくなか駐車場までハイキング。汁気のとりすぎでお腹はチャポチャポ。
まぁ、帰り道の遠かったこと。
“ただ飯”には“落とし穴”が


11月 6日 京都生協北支部フリーマーケット
ぼけモン?靴下 うちのかあちゃんが生協会員なので、共同購入のパンフに今回のフリマ「出店者募集」のチラシが入っていた。京都生協北支部は金閣寺や桜の名所“平野神社”にも近い近代的なお店。その裏手にある物流倉庫での開催だ。
家から車で10分少々と近いし、明日も早起きして但馬ドームが待っている。仲間内のみんなには内緒で、こっそりと申し込んでおいたのだ。
一番乗りで搬入を済ませ自宅に戻る。出店者用の駐車場がないからだ。自宅のガレージに鉄クズ1号を放り込んで、自転車で裏道を走る。30分程で生協北支部到着。30ブースの出店者に顔なじみはいない。久しぶりの「素人さん」大会ぢゃ!
過去あまたのフリマに出店してきたが、こういったケースは当たるとでかい。まあ土曜日ということを差し引いても、先日のカニ祭りで負った痛手を癒すこともできるだろう。なぜなら最悪でも出店者が買って行くからだ。
プロ・セミプロ連中を除いて、フリマに出店する年齢は30才代の主婦層が中心をしめる。小中学生のPTAとダブってくるわけだ。当然子供は成長期の真っ盛りで、服にしても靴にしてもすぐ小さくなってしまう。
なかでも靴下は消耗の度合いが著しい。
一方、その年齢層は若かかりしころバブルの洗礼を受けたため“ブランド”にめっぽう弱い。
つまり・・・「カモ」だ。
「カモ」が自宅の不要品を売って小銭を稼ぐ。小銭はさしずめ「ネギ」か。稼げば少しくらいは使って帰りたい。自分のものは我慢してでも子供のためなら財布を開く「カモ」さん達は、大好物のブランドに目がない。目の前にぶら下がっていれば・・・食いついて離れない。
生協の一支部主催だけに絶対動員数は多くはないものの、トータルすれば上々の数字。
明日に向けて勢いもついた。
かもがねぎ背負って店を出す


11月 7日 但馬ドーム・史上最大のフリーマーケット
そりゃ史上最大の作戦や! 前回苦戦した“カニ祭り”は地元の商工会の主催でした。同じドームで開かれる“史上最大のフリーマーケット”は、会場の但馬ドーム自身の主催。
TVでの告知や周辺地域一円すべてに立て看板を設置するなど、宣伝に全力を注いだ文字通り但馬地域で最大のイベントです。
客寄せの目玉は“マサ”。吉本の漫才師「トミーズ」のボケ役でおなじみの、顔の大きな方が出店します。カニ祭りが手荷物限定100ブースであったのに対して、今回はグラウンドすべてを使って手荷物・車出店合わせて250ブース。確かにドーム史上最大の規模。
カニ祭り同様とばしにとばして7:30の搬入には余裕の到着。車出店のブースは広々としていて、うちの鉄クズ1号の積載能力では埋め尽くせないほど。準備万端整える頃には、お客さんが堰を切ったように押し寄せてきた。
食いつきこそ悪かったものの着々と売り上げが伸びて行く。「カニ祭りにもきてたでしょ?」やはり前回買い控えしていた人達だ。「おかげさんで前回はへろへろの売り上げでしたがな」
結局この日はマサを見に行く暇もなし。上々の売り上げ。しかし、“カニ祭り”とトータルすれば平均値。同じところで日を開けずに開催すれば、こうなることは目に見えていたはず。土・日曜の2日間開催でも、片方の日が良ければもう片方が悪い。2日間ともに良かったためしはまずない。逆に2日間ともに悪かったことは良くあるが・・・・。同様に「万博」「花博」「りんくう」などの大会場も主催者を変え毎週毎週やっていれば、いつか頭打ちが来る。現に「昔ほど売れなくなった」と、皆グチをこぼすようになってきた。
そろそろフリマの将来について考える時期かもしれない。
やりすぎにご注意


11月14日 野田川町きもの祭り
そりゃストリップやろ 今年もやってきましたきもの祭り。丹後半島の中程にある野田川町、ここの商工会に知人がいて年に一度のお祭りに参加しはじめてはや3年。今年はガラス屋の細見さん、婦人服の園田さん、眼鏡屋の野沢君を誘ってやってきました。
ここは体育館内でのこぢんまりとしたイベントの割に売り上げが上がる隠れた穴場のひとつ。しかし、今年はいつまでたっても寒くならない。
去年は体育館の床が冷たくて売り物の靴下を重ね履きしたくらいなのに、今年はぽかぽか陽気で底冷えなし。分厚い靴下を山ほど用意したのに・・・・・・当てが外れた。
昨年同様動員数は・・・・決して多くはない。絶対人口が少ないから当然ではあるが・・・。
細見さんのガラスが売れない。薩摩切り子も江戸切り子も、全く持って高額品が出ないそうだ。園田さんの婦人服も売れていない。派手目のカットソーやセーターは全然動かないそうだ。もちろんうちの靴下も子供人口が少ないために子供向けブランドが動かない。大人向けは前述の通り分厚いものが動かない。
ステージでは毎年恒例の福引き。時折ガランガランと鐘の音が・・・。「お客さんがガランガランやな」細見さん、園田さんの視線が痛い。仲間内で唯一健闘したのが眼鏡屋の野沢君。主力商品の「老眼鏡」が大ヒット。客層にぴたりとはまった様子。
来年は「杖」でも売ろうか?


11月23日 加悦町ふるさと祭り
A4ノートが小さく見える 今回の“ふるさと祭り”は“きもの祭り”の野田川町の隣町、加悦町商工会の主催イベント。前回で懲りたので京都周辺の仲間内には箝口令。
岡山県から福井県まで股に掛けるかばん屋・宮木さんだけに「この人ならはずれても怒らないだろう」と、声をかけた。
当日会場には宮木さん本人の姿はなく、変わりに奥さんが来ていた。
「お父さんは?」「岡山のフリマ」ビアだる体型の宮木さん本人なら少々滑ろうが転けようが心配はない。現にあの人と顔を合わせるイベントはほぼ100%転けるというジンクスさえある。
“狸おやじ”に比べ奥さんは華奢。
う〜ん、きもの祭り同様に転けると人間関係が気まずくなりかねない。
悪い予想は良く当たる。出足が悪い。加悦町も野田川と同じく人口が少ない。主要産業の「ちりめん」はいまや前代未聞の大不況。ようやく売れはじめたところで雨。「弁当忘れても傘忘れるな」の格言が丹後にはあるが、まさにその通り。降水確率は北部10%だったのに・・・。
年と共に広くなってきたおでこに水滴を感じ、しまい支度をはじめて大正解。穴場と思って十分吟味したつもりだったのに・・・・。
穴場の穴は落とし穴


11月28日 宇治市生涯学習センター・なでしこふれあいマーケット
浮気しちゃだめよ 11月の終い頃からはなるべくインドア開催のフリマを選ぶようにしている。もちろん寒いからだ。自分も寒ければお客さんだって寒い。
まだ雪こそ降らないが、あまりに寒いと客足が遠のいてしまう。
ただし、例年の話。今年の異常気象は大したもので、未だに寒波が訪れない。
まあそれでも雨に影響されないだけでもましと、宇治市役所隣の生涯学習センターに出店してみた。
大西夫妻主催の城陽市文化パルクには毎月出ているが、ここはほぼ1年ぶり。城陽市と宇治市は隣り合わせだが、微妙なところで客層が違う。値切りがキツイのだ。最終日曜日は給料日後ということもあってイベントが多い。
そんなこんなでつい浮気して、よそのフリマに出店していたわけだが・・・。久方ぶりの宇治生涯学習センターは出店者で大にぎわい。1年前に比べ業者がへって素人が増えたみたい。
ふたを開けてみればお客さんの数も悪くはない。
客層の悪さを見越し、在庫処分もかねて単価を下げているわけだが食いつきも悪くない。1年前は12時過ぎにはお客さんが切れていたのに、パラパラではあるが遅がけにもお客さんがやってくる。会場入口にライバル店がいなかったらもっと売れていただろう。
今月は穴場を探して方々に出掛けたが失敗続き。あきらめて近くに出てみれば意外な反響。
幸せの青い鳥は身近なところに


12月4日 パルスプラザ 京都環境フェスタ
おひるね 京都でいちばんでっかい見本市会場「パルスプラザ」でフリマ開催と聞きつけ、さっそく申込ハガキを送った。
このパルスプラザで開催されるフリマとしては、毎年春の京都生協主催「コープ春市」がとにかく有名。それに例年参加している身としては、これは捨て置けない。
4日と5日、土曜・日曜日の連チャンをねらい自分名義で2枚、かあちゃん名義で2枚。去年出店した連中の話を聞いて、念のため、かあちゃんの旧姓でも2枚送って計6枚の先行投資。結局当たったのは土曜日一通のみ。う〜ん聞きしにまさる競争率。
勝手知ったる会場に車を乗り付け、裏口から搬入開始。うまいこと角地が当たりディスプレイを終了。開場までまだ時間があるので、会場内をしばし散策。
フリマ会場の隣にある大ホールには企業出店者がぎっしりと、2階のホールにも環境関連の企業ブースが並ぶ。さすがはお役所イベント、関西の中堅広告代理店「大広」のプロデュース。
一通り見て回って一安心。今日は競合先ゼロ。うまく行けばワンチャンス!! 値段表示をつけて商売開始。
しかし、これがまた芳しくない。
一人勝ちの条件は十二分に満たしているのだが、なかなか売り上げが上がらない。昼をまわった時点で、そろそろ引き上げる出店者の姿もちらほら。まあ、この近郊は商業激戦区。お客さんも一筋縄には行かない連中が多い。コープ春市は京都生協会員が市内全域から集合するが、今回は土曜日ということもあって地元の連中が中心。まぁ、それでも何とかソコソコの数字が上がっただけに贅沢は言えない。
暇つぶしに受付の「大広」のおねぇちゃんと世間話。
「同一住所のハガキは一通だけに絞って抽選する」そうで。
まぁ、お堅いこと

番 外 編 お正月

テキ屋のPちゃん リンゴ飴に挑戦
リンゴ飴 京都北野天満宮は、学問の神様「菅原道真」を奉った由緒正しい神社。受験シーズンを目前に控えたお正月には「せめてもの神頼み」と、全国から多くの学生が初詣に訪れる。その境内に三寸(テント)をはり、縁起物やら食べ物を扱うのは「本職」の方々。おいらのようなパートタイマーが、おいそれと参入できない玄人の聖域。その「侵すべからず」の聖域に、ついに足を踏みこむことになってしまった。「P助ついに組に入ったのか?」とか、「もう半袖の着られない体になったの?」とか勘違いしないように。お正月・期間限定のアルバイトです。

思い起こせば3年前、年末年始の夜通しフリマと聞いて参加した「三井寺」初市の苦い思いで。大晦日から泊まり込み、臨戦態勢で迎えた除夜の鐘。わき目もふらず鐘を突く門徒衆。急ぎ足で通り過ぎるバスツアー客たち。しのつく雨に濡れながら、みんなで飲んだお屠蘇替わりのやけ酒。それ以来、正月早々店を出さないことにしていたのだが・・・。

頼まれれば「いや」とは言えない。ましてや、毎月25日の「天神さんの市」ではお隣さんの間柄、当然現役バリバリのご本職。大将や奥さんに目をかけていただいて、その奥さんが倒れて入院したこともぜんぶ知っているだけに。

年末恒例の大掃除&年賀状書きを終え、昼前に大将の家に到着。お店となる三寸はすでに現地で設営済み。富士リンゴ15箱・姫リンゴ10箱・みかん5箱・イチゴ4×10パック・砂糖30kg×3袋・・・、70歳近いクライアントに荷物運びをさせるわけにも行かず、「若い衆」としてはひたすら荷物運びにいそしむ。これでも例年よりは数を減らしているそうな。袋やらモールなどの消耗品を運んで午前の部終了。昼飯をゴチになって、8時頃まで自由時間。とりあえず自宅にもどる。

「レコード大賞」を途中で切り上げ、大晦日の街を自転車で走り抜ける。いつもなら人通りの絶えないアーケード街も、ひっそりと静まり返っている。約束の5分前に到着するも、大将には先を越された。親分・子分の関係では許されないことかと心配したが、何のおとがめもなし。ちょっと拍子抜け。さっそく丁稚どんのまえだれをかけて、「仕込み」の方法を教わる。富士リンゴは手ぬぐいで磨き、割り箸を芯に突き挿し2/3のところで止める。この割り箸も両サイドが細く削られた「利休箸」。大将、なかなかやるじゃん。
そういえば「国際ホテルのイタリア料理は胸が焼ける」とか「めん馬鹿一代のラーメンなんか食えたモンやない」など、会話の中でさりげなくグルメねたが多い人。何気ないところにも食通のこだわりがあるのか。
姫リンゴやイチゴの竹串には、角に削った焼き鳥用を使用する。これにも滑り止めの意味があるのだろう。
みかんはすでにナイフで皮をむいてある。身を包んだ薄皮を傷つけない丁寧な仕事。昨夜夜なべでやったとか。「慣れた者がやらないと、果汁がこぼれて飴の仕上がりが悪くなる」のだそうだ。
イチゴは3Lクラスの「豊の香」を惜しげもなく使う贅沢さ。これもこだわりかと思ったら、なじみの八百屋への発注ミスだって。

使い込んだ雪平鍋に砂糖をおたまで2杯。少量のお湯と「かき氷用」のフレーバー・食紅を加えて火にかける。
ぼこぼこと沸き立つ泡で、リンゴをくぐらすタイミングを見極める。「ちょっと目を離すと、火が入るから」水分が蒸発して飴が沸き立つとき、ゆうにその温度は百度を超えるそうだ。そりゃそうだ。なぜなら砂糖の主成分は炭素。焼き鳥やウナギを焼くときに使う“炭”と同じ成分だから。「だから人には任せられない」のだと。
鍋の中は別府温泉の“坊主地獄”のよう。泡のダンスが感極まったとき、絶妙のタイミングで火からおろす。磨き抜かれた銅板の上にサラダオイルを薄〜く塗るころには、沸き立つ飴は、まるで憑き物が落ちたかのように静まっている。暖冬とはいえ大晦日。紅白もすでに始まっている。しんしんと冷える京都の冬が、飴に粘りを取り戻させるのだ。

右手でリンゴに挿した利休箸、左手には鍋の柄を。飴にリンゴを浸してクルリと回す。飴をからめたリンゴはすかさず銅板の上に。ほんの数秒の早業で、1人前完成。あっというまに、銅板上はリンゴ飴で埋め尽くされる。さすがは本職。

飴が完全に固まったら、丁稚の出番。セロファン袋にリンゴ飴をガサガサと押しこんで、モールでしばる。このとき、右手の親指と人差し指でモールを挟み、リンゴ飴本体をクルッと回すのがこつ。ガサガサ、クルッ。ガサガサ、クルッ。これの延々繰り返し。気分はすでに「内職」モード。パッケージ済みのリンゴ飴がある程度たまったら、店頭に並べる。富士リンゴ、姫リンゴ、ミカン飴までは同様の行程が続く。

三寸の隅っこに鎮座したTVでは紅白歌合戦も佳境に入っている。小林幸子の派手な衣装が登場する頃になると、参道もちょっぴり賑わってくる。イチゴ飴の仕込みも始まった。大将の作業はその他の飴と同様だが、例年より大粒のイチゴを使用しているため袋に入れづらい。おまけに、クルッと回すと串が抜ける恐れがあるため、慎重にモールを指でひねらなければならない。悪戦苦闘しているうちに、袋掛け前のイチゴ飴がどんどんとたまってくる。

紅白も終わり、除夜の鐘が鳴り響いても、人の出が悪いそうだ。これも2000年問題の影響なのか?客層は中高校生のグループやアベックが中心。ようはパソコンのトラブルと縁のない連中。社会人らしき参拝者は、ほんの一握りにも満たないようだ。

カウントダウンが始まり、記念すべき2000年の幕開けを天神さんの参道で迎えた。「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」「こちらこそ」年賀の挨拶がおわるとともに、俄然商品が動き始めた。

カップル 子供相手の商売とたかをくくっていたが、結構アベックなんかが買って行く。「あたし〜、イチゴがいいな〜」と、おねーちゃんがせがんで男が財布から小銭を出すパターン。「新年そうそう、鼻の下なんかのばしてんじゃねぇ!」と、腹のなかで悪態をつきながらの内職作業。よりによって、一番手間のかかるイチゴ飴が大ブレイク。群集心理が働いて、「私も、私もイチゴ飴」と、戦艦大和に群がる米軍機のような波状攻撃が延々続く。もちろん二人きりだから商品の仕込みからパッケージ、接客、現金出納まで総てをこなさなければならない。例年より人が少ないそうだけれども、これで結構忙しいのだ。
やっと参道がすいてきたなと思ったら、もう4時前。翌日8時集合と言うことで本日はお役ご免。自転車で自宅にもどった。

元旦早々自転車をとばして北野天満宮へ。本日からは3人体制。おまけにその子は女子大生と聞いていたので、新年早々よこしまな期待に胸を膨らませて駆けつけた。「女子大生」はいた。現役のR大の女子学生。ただし、「女子大生」という言葉で思い描いていたイメージとは、少々趣が違った素敵な女性であった。まぁ、有名人にたとえると「神取忍」タイプ。本人がそういったんだから、この発言はセクハラでも何でもない。柔道部員だけあって元気がよい。こうして元旦の商売がスタートした。

「神取忍」に昨日教わった作業をレクチャーし、仕込みの開始。昨夜とうってかわって参拝客も多い。昼過ぎごろになると朝夕の通勤ラッシュもかくやの混雑ぶり。学業の神様だけに子供連れも多く、三寸のなかはてんてこ舞い。ただし、3人体制だけに昨夜ほどの忙しさは感じられなかったが。

朝・昼の食事は、大将が近くの露店から運んできてくれる。うどん、焼きそば、たこ焼きにお好み焼き・・・。縁日のおなじみのメニューが、みな顔見知りだけにすべてタダ。ビールに日本酒、ウイスキーなども飲み放題。ただし、これは体を中から温めるため。暖冬とはいえ、真冬のこと。ストーブやガスコンロを使っていても、石畳の上に立っているだけに足元が冷たい。ドタバタとやっているうちに夕闇が迫り、本日は7時前に予定終了。解散と相成った。

2日目ともなると、作業も手慣れたもの。忙しい時間帯も把握できている。これと言ったトラブルもエピソードもなく2日目を終了。ただし、決して楽だったわけではない。忙しかっただけにあっという間に1日が過ぎてゆくだけだ。

3日目の朝は、大将の仏頂面から始まった。三寸のなかが荒らされ、釣り銭用の50円硬貨が盗まれたのだ。
もちろんお札や500・100円硬貨は前夜大将が持ち帰っている。「まさか」と油断して、50円硬貨と10円硬貨をそれぞれビニール袋に入れて置いて帰ったそうである。隣に置いてあった10円硬貨には手をつけず、50円硬貨のみが持ち去られたわけだ。その手口から、どうやら同業者の犯行と断定した。

昨年末、金融機関は2000年対策で大混乱。窓口はおろかATMや両替機のコーナーさえも早めに閉めていた。こんな時、両替に重宝するのがパチンコ屋。しかし、悲しいことに崩せるのは100円硬貨まで。こんな時にいちばんに不足するのが50円以下の硬貨なのだ。

ではなぜ、犯人は10円硬貨に手を着けなかったのか?

これは実際に販売にたった経験がないと、理解できないであろう。客単価の低い商品を扱う以上、売り上げを伸ばす方法はひとつ。「いかに手際よく客をさばくか」だ。ピーク時に手際よく販売できなければ、その日の売り上げは頭打ち。お釣りを渡すとき、50円硬貨1枚なら手探りでも渡すことができる。ところが、10円硬貨では5枚ほど数を数えて渡さなければならない。たった数秒の違いでも100人1000人単位になれば大きな違いが出るからだ。

しかし、被害総額は2〜3000円。そんな事件があった事を忘れてしまうほど、あわただしい時間が今日もまたあっという間に過ぎてゆく。大将の仏頂面でスタートした3日目も、夕闇の訪れとともに予定終了。私は今日でお役ご免。3日半の給料日を封筒に入れていただくが、なかを見てびっくり。ピンピンの新札で6万5000円も入っていた。新年早々割の良いバイト。

こいつぁ春から縁起がいいわい

1〜2月は冬眠中。ルーチンの所ばかり取り上げても面白くないでしょ?
次回は3月のフリマをまとめて取り上げる予定です。

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